こんにちは。ワケガイ編集部です。
「親から相続した実家に誰も住まなくなった」「相続人間で話し合いが進まず空き家をそのままにしている」といったケースでは、思わぬ問題が発生することがあります。
老朽化による倒壊リスクや税金負担が続くだけでなく、近隣トラブルや行政からの指導といった事態に発展しかねません。
その際に検討すべきなのが空き家の処分です。空き家の処分とは、売却・解体・寄付などを通じて不動産としての扱いを終わらせることを指します。適切に処分を行うことで、金銭的負担や心理的ストレスを軽減し、将来的なリスクを避けることができます。
そこで今回の記事では、空き家を放置した場合に起こりうるリスクや、代表的な処分方法、それぞれの注意点や必要な費用について詳しく解説します。
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目次
空き家を処分しないままでいるリスク
空き家を相続したものの、当面使う予定がないからと放置してしまうケースは少なくありません。しかし、そのまま放置していると、さまざまなトラブルの温床になってしまうことがあります。
結論として、空き家の放置が社会的・経済的に許容されるのは、おおむね「数年以内」までと考えるべきです。それを超えると、老朽化や制度上のリスクが顕在化しやすく、結果的に処分費用も跳ね上がる傾向があります。
具体的には、以下のとおり。
- リスク①:老朽化により倒壊や火災などにつながりやすい
- リスク②:特定空家に指定されると行政代執行される
- リスク③:固定資産税や維持費など経済的負担が続く
- リスク④:不法投棄・空き巣などの犯罪リスクが高まる
- リスク⑤:親族間トラブルの火種になることもある
それぞれ個別にみていきましょう。
リスク①:老朽化により倒壊や火災などにつながりやすい
空き家を長期間放置すると、建物は徐々に老朽化し、構造的に不安定な状態になります。特に木造住宅は湿気やシロアリ被害に弱く、屋根や外壁の損傷から劣化が一気に進むこともあります。
目に見えない部分が脆くなっていると、台風や地震の際に倒壊するおそれがあり、万一近隣の人や物に被害が出れば損害賠償の責任を負う可能性があるのです。
また、老朽化が進んだ建物は、いざ売却しようとしても買い手がつかず、査定額も下がってしまいます。管理が行き届いていないことが購入希望者に不安を与え、資産価値が実質的にゼロに近づくこともあります。維持せず、処分せずにいることで、結果的に自由に活用できる選択肢が失われていくのです。
リスク②:特定空家に指定されると行政代執行される
老朽化ともつながる話ですが、空き家の放置を続けていると、行政から「特定空家等」に指定される可能性があります。これは、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づく制度で、倒壊や衛生、景観といった周囲への悪影響が認められる場合に適用されます。
特定空家に指定されると、自治体から建物の修繕や撤去を促す「助言」「指導」「勧告」などの段階的な措置が講じられ、それでも改善が見られない場合には「命令」、さらには行政代執行による強制解体まで進むことがあります。
(出典:政府広報オンライン「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」)
代執行にかかった費用は原則として所有者に請求されるため、放置していたことで数百万円単位の負担を強いられかねません。特定空家の指定を受けてしまうと、資産としての価値だけでなく、所有していること自体が負担に転じてしまうのです。
関連記事:空き家の固定資産税が6倍に!? 適用される条件や対策方法を完全解説
リスク③:固定資産税や維持費など経済的負担が続く
空き家を所有している限り、たとえ誰も住んでいなくても固定資産税は毎年課税されます。建物がある土地については「住宅用地特例」により税額が軽減されますが、もし建物が著しく老朽化して危険と判断されると、住宅用地とみなされなくなるケースもあります。その場合、土地の固定資産税は最大で6倍に跳ね上がることがあります。
また、空き家を維持するには税金以外にも費用がかかります。雑草が生い茂れば草刈りが必要ですし、台風で屋根が飛べば修理が求められます。通気をしなければ内部のカビや腐敗も進みやすくなります。こうした管理コストは積み重なると年間数万円から十数万円に及ぶこともあり、「住まないのに払い続ける」という感覚が強烈なストレスとなります
リスク④:不法投棄・空き巣などの犯罪リスクが高まる
無人の空き家は、地域の安全や衛生面において問題の原因になりやすい存在です。特に、目が行き届かないことを逆手に取った不法投棄が問題となります。
敷地内に粗大ごみや生活ごみが置かれると悪臭や害虫の発生につながり、近隣住民からの苦情も増えます。一度ゴミが置かれると、他の人も「捨てていい場所」と思い込み、連鎖的に不法投棄が加速しかねません。
また、空き家は空き巣や不審者の侵入の対象になりやすく、防犯上のリスクも高まります。鍵が壊れたままになっていたり、電気や水道が止まっていない状態だと、簡易的な住居として不法占拠される例も報告されています。
こうした状態を長く放置すると、所有者自身が責任を問われる可能性もあるため、社会的な信頼を損なうリスクにもつながるのです。
関連記事:空き家の防犯対策はどうすればいい?防犯グッズや役立つ知識を解説
リスク⑤:親族間トラブルの火種になることもある
空き家を誰がどのように処分するかについて、相続人の間で意見が割れることは珍しくありません。特に「想い出の詰まった実家だから残したい」「費用負担をしたくない」「遠方で管理できない」など、立場や価値観の違いから対立が生まれやすい状況になります。
名義が共有のままになっている場合、売却や解体を行うには全員の同意が必要です。1人でも反対する相続人がいれば、処分が進められないこともあります。時間が経つとさらに関係が悪化し、弁護士を立てた話し合いや裁判に発展するケースもあります。
空き家を処分する4つの方法
空き家をそのまま放置するのは避けたいけれど、どう処分すればよいかわからず足踏みしてしまう方も多いのではないでしょうか。空き家にはいくつかの現実的な処分方法があり、状況や目的に応じて選ぶことで、経済的・心理的負担を軽減することが可能です。
そんな空き家の代表的な4つの処分方法として、次のものが挙げられます。
- 方法①:不動産として売却する
- 方法②:自治体やNPOへ寄付する
- 方法③:国に返還する
- 方法④:無償譲渡する
以下より、詳しく解説します。
方法①:不動産として売却する
空き家の処分方法として最も一般的なのが、売却です。土地付きの建物として販売できる場合は、資産を現金化できる有力な選択肢となります。
ただし、売却といっても方法はいくつかに分かれます。どの売却手段を選ぶかによって、かかる時間や手間、価格帯に差が出てくるため、自分の状況に合った方法を選ぶことが重要です。
関連記事:空き家を売却する方法とは?売却の流れや費用を徹底解説!
①-1:不動産会社の仲介で売却する
市場価格での売却を目指すなら、不動産会社による仲介を利用するのがベターな手法です。売却活動や内見の調整、契約手続きなどをすべて任せられるため、初めての人でも進めやすい方法です。
一方で、築年数が古く修繕が必要な物件では、なかなか買い手が見つからず、売却までに数ヶ月以上かかることもあります。また、売買が成立した際には「売却価格の3%+6万円(上限あり)」の仲介手数料が発生します。
①-2:空き家バンクに登録して売却する
自治体が運営する「空き家バンク」に物件を登録し、移住希望者などに売却する方法もあります。地方移住を希望する層とのマッチングが狙えるため、築年数が古くても活用希望者が現れる可能性があります。
ただし、リフォームが条件になることも多く、相場より安く売るケースが大半です。また、自治体によっては登録料や現地調査の提出が必要になりかねません。
①-3:買取専門業者に買取依頼をする
空き家を売却しようと思っても、立地や築年数、建物の傷み具合などから、仲介ではなかなか買い手が見つからないケースがあります。そうした「売れない空き家」に悩む方にとって、有力な選択肢となるのが買取専門業者への依頼です。
買取業者は、仲介とは異なり自らが買主となるため、内覧対応や交渉の手間が不要で、最短数日で現金化できるというスピード感が魅力です。また、仲介手数料がかからず、瑕疵担保責任(物件に欠陥があった場合の売主責任)も免除されることが多いため、心理的な負担も軽減されます。
ただし、買取価格は市場価格より低めになる傾向があるため、「なるべく早く確実に処分したい」と考えている方に向いている方法です。
関連記事:空き家の買取価格を上げるコツとは?相場や業者選びのポイントを解説
方法②:自治体やNPOへ寄付する
築年数が非常に古く、売却が難しい物件については、自治体やNPO法人に寄付という形で引き取ってもらう選択肢もあります。
たとえば、地域活性化を目的とした団体が、空き家を拠点施設や地域交流スペースとして活用するケースがあります。売却益は見込めませんが、維持管理の負担からは解放されます。
ただし、どの自治体や団体でも引き取ってくれるわけではなく「立地が良い」「構造が安全」「用途に合う」などの条件を満たす必要があります。
また、寄付といっても登記費用や書類手続きは発生するため、無償とはいえ一定の負担は覚悟が必要です。
方法③:国に返還する
空き家が山林や農地などを含む特殊な土地であり、処分先が見つからない場合、「相続土地国庫帰属制度」の活用も検討の余地があります。これは2023年4月に始まった新制度で、一定の要件を満たす土地であれば、所有権を国に返還できるというものです。
(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度」)
ただし、すべての空き家に使える制度ではありません。「建物が残っている土地」「管理に費用がかかると判断される土地」は対象外です。
さらに、10年分の管理費に相当する負担金(数十万円程度)を納付する必要があるため、事前に制度の詳細と対象条件をよく確認する必要があります。
方法④:無償譲渡する
特定の買い手が見つからない場合でも、知人や第三者に無償で譲渡するという方法もあります。たとえば、隣接地を所有する人が土地の利用価値を見いだしてくれるケースや、空き家を再利用したい個人・法人が譲渡を希望する場合などです。
この場合、売買のように代金の授受は発生しませんが、登記の名義変更や契約書の作成が必要になります。
贈与にあたる可能性があるため、税務上の確認も忘れてはいけません。形式上は「手放すだけ」でも、法律上の整理や税務処理が伴うため、自己判断で進めるのではなく、専門家に相談することが推奨されます。
関連記事:不動産の贈与税はいくらかかる?計算方法と税金を抑える7つのポイント
空き家を処分する際の注意点
空き家の処分を考えるとき、ただ売却や解体を行えば済むというわけではありません。ここでは、処分の過程で陥りがちなポイントを整理し、スムーズに進めるために意識しておきたい点を解説します。
具体的には、次の事柄に留意しましょう。
- 相続登記が済んでいないと売却・解体ができない
- 解体前に建物の価値や税制優遇の有無を確認する
- 処分費用と売却益のバランスを見極める
- 親族間での合意形成を怠るとトラブルの原因になる
- 空き家特有の法規制や地域ルールを確認する
それぞれ個別に解説します。
相続登記が済んでいないと売却・解体ができない
空き家の所有者が亡くなっている場合、まず確認すべきなのが「相続登記の有無」です。登記簿上の名義が被相続人のままでは、売却や解体といった処分手続きは一切進めることができません。
不動産の権利関係は登記によって公的に証明されるため、名義が現所有者に変更されていない限り、第三者との契約や行政手続きが認められないのです。
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記申請をしないと、10万円以下の過料が科される可能性もあります。これまでは任意だったため放置されがちでしたが、今後は制度的にも対応を求められることになります。
仮に売却希望者がいても、登記未了のままでは契約に進めず、せっかくの機会を逃してしまうこともあります。
空き家を処分するには、まず「自分が登記上の所有者であるか」を確認し、必要であれば早めに名義変更の手続きを済ませておくことが大前提です。
関連記事:相続登記の義務化はいつから?背景と現状を解説
関連記事:相続登記の費用はいくらかかる?司法書士への依頼費用や必要経費を金額例で徹底解説!
解体前に建物の価値や税制優遇の有無を確認する
築年数が古く、住める状態ではないからといって、すぐに解体してしまうのは慎重に判断した方がよい場合があります。というのも、古い建物であっても、リノベーションによって再利用できる可能性や、空き家バンクなどを通じて活用したいという希望者が現れることがあるからです。
また、解体によって失われる「税制上の優遇措置」にも注意が必要です。たとえば、建物が残っている土地には前述のとおり「住宅用地特例」が適用され、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。
しかし、建物を取り壊して更地にしてしまうと、この特例がなくなり、翌年度から土地の税額が跳ね上がる可能性があります。
加えて、解体には数十万円から100万円を超える費用がかかることも多く、後になって「売却より費用の方が高くついた」と後悔するケースもあります。処分を進める前に、建物の状態や再活用の可能性、そして税負担の変化を冷静に見極めることが欠かせません。
処分費用と売却益のバランスを見極める
空き家を売却する際、どの程度の費用がかかるのかを把握せずに手続きを進めてしまうと、思わぬ出費により損失が出ることがあります。
解体費用は数十万円から100万円を超えることもあり、加えて測量費用や仲介手数料、登記関連費用など、処分には複数のコストが発生します。一方で、物件の立地や状態によっては市場価値が期待よりも低く、売却益が費用を下回るケースも珍しくありません。
処分を急ぐあまり費用対効果の検証を省いてしまうと、後になって後悔することもあります。まずは複数の専門業者に査定を依頼し、費用と売却価格の見通しを比較することが重要です。
親族間での合意形成を怠るとトラブルの原因になる
空き家が相続されたものであり、共有名義になっている場合、処分にはすべての所有者の同意が必要になります。
しかし、相続人同士で意見が割れると、売却や解体といった手続きが進まなくなります。特に「思い出があるから残したい」「費用負担を避けたい」など、感情や立場の違いから対立が生じるケースも多くみられます。
こうした状態が長引くと、家の老朽化や税負担は進行し、結果的に誰にとっても不利益な状況になりかねません。処分を検討する際は、まず関係者と率直に話し合い、可能であれば専門家を交えて合意形成を図ることが望ましい対応といえます。
空き家特有の法規制や地域ルールを確認する
空き家を処分しようとする際、見落とされがちなのが法的な制限です。たとえば、都市計画法に基づく「市街化調整区域」では、原則として新たな建物の建築が認められないため、更地にしても買い手が見つかりにくいことがあります。
また、「再建築不可物件」では、道路との接道義務を満たしていないため、現状のままでは建て替えができず、流通性が著しく低下します。
こうした制約は一見してわかりにくく、個人の判断だけでは対応が難しい分野です。売却を進める前に、役所の都市計画課や不動産専門家に確認をとり、法的なリスクや可能性を事前に把握しておくことが大切です。
空き家をスムーズに処分する手順
空き家の処分は焦って進めると余計なトラブルを招くこともあるため、事前に全体の流れを把握し、一つずつ確認しながら進めることが大切です。空き家を円滑に処分するための具体的な手順は、以下の6ステップに大別できます。
- 手順①:空き家の現状を確認する
- 手順②:所有者や名義を確認する
- 手順③:家族・相続人と方針を話し合う
- 手順④:専門家(不動産会社・行政・士業)に相談する
- 手順⑤:処分方法を選んで実行に移す
- 手順⑥:必要な税務申告やアフターフォローを行う
各手順の詳細についてみていきましょう。
手順①:空き家の現状を確認する
まず行うべきは、空き家の状態を正確に把握することです。建物の老朽化の程度、シロアリや雨漏りの有無、基礎や屋根の損傷状況などを確認し、リフォームで対応できるのか、それとも解体が必要なレベルなのかを見極めます。
さらに、土地の形状や敷地面積、接道状況、建築基準法上の制約も調べておくと、処分方法の選定に役立ちます。
手順②:所有者や名義を確認する
空き家を処分するためには、所有者が誰であるかを法的に明確にする必要があります。たとえ家族のものであると認識していても、登記上の名義が故人のままになっていれば、売却や解体といった処分はできません。
そこで、まず法務局で「登記簿謄本(全部事項証明書)」を取得し、現在の名義人を確認しましょう。
また、固定資産税の通知先や土地の所有状況を把握するには、市区町村役場で「名寄帳」を取得するのが有効です。複数の土地が関係している場合や、家屋と土地の名義が異なっているケースもあるため、念入りにチェックしましょう。
手順③:家族・相続人と方針を話し合う
空き家が相続されたものであれば、まず避けて通れないのが家族や共有者との話し合いです。どのように処分するかを決める前に、誰が何を希望しているのかを把握することが必要です。
放置すればするほど感情の対立が大きくなりやすいため、できるだけ早い段階で方針を共有し、必要に応じて第三者(専門家)を交えて話し合うのが現実的な進め方です。
手順④:専門家(不動産会社・行政・士業)に相談する
処分の方針がある程度固まったら、具体的なアクションに入る前に専門家へ相談することをおすすめします。
不動産会社は物件の査定や売却ルートの提案、士業(司法書士や税理士)は登記や税務申告など法的な面で支援してくれます。また、自治体の空き家対策窓口では、解体補助金や空き家バンクに関する制度案内を受けることができます。
特に、費用や法律が絡む問題は個人で処理しきれないことも多いため、早い段階で信頼できるパートナーを見つけておくと、後の手続きが格段にスムーズになります。
手順⑤:処分方法を選んで実行に移す
空き家の状況や家族の合意、専門家のアドバイスを踏まえて、実際に処分方法を決定します。たとえば、状態の良い物件であれば仲介による売却も視野に入りますし、買い手が見つかりにくいエリアや再建築不可物件の場合は、専門業者による買取が適しているかもしれません。
解体して更地にする選択肢もあれば、空き家バンクへの登録やNPOへの寄付といった方法も考えられます。大切なのは、自分たちにとって「何を優先したいのか」を整理することです。価格、スピード、手間、将来の管理責任──どこに重きを置くかによって、最適な方法は変わります。
手順⑥:必要な税務申告やアフターフォローを行う
空き家の処分が完了しても、それで全てが終わるわけではありません。売却によって利益が出た場合は、譲渡所得税の申告も必須です。
特例の適用を希望する場合も、確定申告の際に所定の書類を添えて提出する必要があります。こうした税務処理を怠ると、後で追徴課税やトラブルになることもあるため注意が必要です。
また、名義変更が正しく完了しているかの確認、登記簿や固定資産税の送付先の更新など、名実ともに所有権が移ったことを示す各種手続きも忘れずに行いましょう。
空き家の処分で発生可能性のある費用
空き家の処分にはさまざまな費用が伴います。実際にかかる費用の総額は、状況によって大きく異なりますが、最低でも数十万円、場合によっては200万円〜300万円程度になることもあります。
特に、解体や測量、税務処理が必要な場合には、それぞれに専門家の関与や法的な手続きが必要となり、費用もかさみがちです。
空き家を処分する際に想定される費用項目としては、以下のとおりです。
- 登記関連費用
- 譲渡所得税(※売却益が出た場合)
- 契約書作成費・印紙代
- 測量・境界確定費用(※土地売却で隣地との境界が曖昧な場合)
- 解体費用(※老朽家屋を解体して更地にする場合)
- 仲介手数料(※不動産会社の仲介で売却する場合)
次項より、個別に解説します。
登記関連費用
不動産の処分を行うには、必ずといってよいほど登記手続きが発生します。所有者が変わる場合には所有権移転登記が必要であり、その際には税金と専門家報酬の両方がかかります。
登録免許税(※所有権移転登記が必要な場合)
所有権を相続人や買主に移す際に発生するのが登録免許税です。売却の場合、税額は「固定資産税評価額 × 2%」が基本で、相続登記であれば「同 × 0.4%」となります。
たとえば評価額が1,000万円の土地を売却する場合、登録免許税は20万円程度になります。この費用は登記申請時に納付するため、資金計画に含めておく必要があります。
関連記事:登録免許税とは?計算方法と軽減措置、具体的な相場まで徹底解説
司法書士報酬
登記申請を自分で行うことも可能ですが、多くの場合は専門知識が求められるため司法書士に依頼します。
報酬は内容により異なりますが、所有権移転登記のみであれば3〜7万円前後、相続登記を含む場合は10万円を超えることもあります。複数の不動産がある場合や相続人が多い場合は、報酬が加算されることもあるため、見積もりは早めに取得した方が安心です。
譲渡所得税(※売却益が出た場合)
空き家を売却し、購入時より高値で売れた場合は「譲渡所得税」が発生します。譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で計算され、これに税率(短期保有なら約39%、長期保有なら約20%)がかかります。
なお、非常に厳しい条件ながら、被相続人の住まいを相続後に売却した場合、最大3,000万円の特別控除が適用されることもあります。売却の際には、合わせて確認しておきましょう。
ただし、特例を利用するには期限内の申告と必要書類の提出が不可欠です。「売って終わり」ではなく、確定申告までを視野に入れてスケジュールと費用を考える必要があります。
関連記事:不動産売却の税金はいくら?譲渡所得税の計算方法と節税できる特例を解説
契約書作成費・印紙代
売買契約書や譲渡契約書には、法的効力をもたせるために「印紙税」が課税されます。たとえば、1,000万円で空き家を売却する場合、印紙代は1万円です。個人間の取引や贈与、寄付の際にも契約書を交わすことがありますが、その場合でも印紙が必要になる可能性があります。
また、契約書を自作せず専門家に依頼する場合は、文案作成費として1万円〜3万円程度かかることもあります。不備があると後々のトラブルにつながりかねないため、慎重な扱いが求められる項目です。
測量・境界確定費用(※土地売却で隣地との境界が曖昧な場合)
土地の境界が不明確な場合、売却前に確定測量を行うことが求められることがあります。とくに隣地所有者との立ち会いが必要なケースでは、専門の土地家屋調査士に依頼しなければなりません。
費用は土地の形状や面積、隣接地の数によって変わりますが、30万〜60万円程度が相場です。確定測量を行っておくことで、買主の安心感にもつながり、売買がスムーズになるメリットもあります。
解体費用(※老朽家屋を解体して更地にする場合)
老朽化が進んだ建物や、再建築不可物件などは、売却前に解体して更地として売るほうが買い手が見つかりやすい場合があります。
解体費用は建物の構造と規模によって異なりますが、木造住宅であれば1坪あたり3〜5万円が目安です。たとえば延床30坪の建物なら、解体だけで90万〜150万円前後かかることになります。
さらに、アスベストの処理や残置物の撤去が必要な場合、追加で費用が発生することもあります。解体後の土地に対する固定資産税の増加リスク(住宅用地特例の喪失)もあるため、単に「壊せばいい」と考えるのではなく、全体の損益を見ながら判断しましょう。
関連記事:空き家の解体費用はどのくらい?コスト抑えるための方法を詳しく解説
仲介手数料(※不動産会社の仲介で売却する場合)
不動産会社を通じて売却する場合、契約が成立すれば「仲介手数料」が発生します。法律上の上限は「売買価格の3%+6万円+消費税」で、たとえば1,000万円の物件であれば約39万6,000円が上限です。この手数料は売却が成功して初めて支払う「成功報酬型」ですが、金額としては無視できないため事前に理解しておくことが大切です。
また、仲介を依頼する場合には媒介契約の種類(専属・専任・一般)によって売却活動の自由度や報告義務が異なるため、手数料以外にも契約内容をよく確認したうえで進める必要があります。
関連記事:不動産売却で発生する仲介手数料とは?基本情報や計算例を詳しく解説
空き家の処分で使える補助金はある?
空き家を処分する際、費用面の不安から手続きをためらう人は少なくありません。解体工事やリフォーム費用は決して小さくなく、特に古い木造住宅では数十万円から百万円を超える出費になることもあります。
こうした負担を軽減するために、多くの自治体では補助金制度を設けています。
老朽化した空き家の解体費用に対する補助金
木造住宅などの老朽家屋は、倒壊リスクや景観・衛生面での近隣トラブルにつながることがあり、早めの解体が望ましいとされます。ただし、家財撤去から建物の取り壊しまでには高額な費用が発生するため、躊躇してしまうケースも多いのが現実です。
たとえば東京都では、「空き家家財整理・解体促進事業」により、一定の条件を満たした空き家について、家財処分費や解体工事費の一部を助成しています。対象となるのは、居住実態がなく一定期間放置された住宅などで、事前申請と審査が必要です。
また、全国の自治体でも同様の助成制度が整備されており、「解体サポート」という情報サイトでは、都道府県別の補助制度の内容を確認できます。
(出典:解体サポート)
このような助成対象や補助額、申請方法は自治体によって異なるため、工事を始める前に、必ず自治体窓口に確認を取りましょう。
空き家バンクを活用したリフォーム費用の補助金
「解体ではなく、活用を前提に売却したい」と考える方にとっては、空き家バンク登録とリフォーム補助を組み合わせた選択肢があります。特に地方移住を支援する自治体では、購入者に対してリフォーム費用の補助金を支給する制度が整備されています。
たとえば栃木県鹿沼市では、「空き家バンクリフォーム補助金」として、空き家バンク物件を市外在住者が購入・改修する場合に、工事費の2分の1(上限50万円)を補助しています。水回りの更新や内装改修など、実生活に関わる部分も支援対象に含まれています。
また、長野市の「移住者空き家改修等補助金」では、最大4分の3(上限150万円)の補助が受けられます。さらに、家財撤去や耐震補強など、移住後すぐに快適な生活が始められるよう配慮された内容になっています。
これらの制度は、売却や寄付といった「処分」の選択肢に対しても、間接的にハードルを下げてくれる存在です。買い手が補助金を受けられる環境であれば、結果的に売却が成立しやすくなり、所有者にとっても好条件となる可能性があります。
処分に困る空き家を「相続放棄」するのはあり?
相続放棄とは、被相続人の財産を一切引き継がないとする手続きで、相続の開始を知った日から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
空き家の処分に困り、「不動産だけ放棄したい」と考える方もいますが、相続放棄はすべての財産が対象であり、空き家だけを選んで放棄することはできません。
また、放棄すれば完全に責任がなくなるわけでもありません。次順位の相続人が引き継がない場合、空き家は一時的に誰の名義にもならず、管理が宙に浮いた状態となります。最終的には自治体の管理に移行する可能性はありますが、それまでの間は放置されやすく、近隣への影響も懸念されます。
さらに注意したいのは、放棄の申述前や受理されるまでの間は、民法940条により相続人に管理義務が課される点です。2023年の法改正では、管理責任に関する考え方も整理されつつありますので、「放棄すればすべての負担から即時に解放される」という認識は危険といえます。
関連記事:空き家を相続する場合の判断基準とは?相続放棄についてもセットで紹介
関連記事:相続放棄の手続きは自分でできる?流れや専門家に相談すべきケースを紹介
空き家の処分に悩んだら「ワケガイ」にご相談ください!
当社(株式会社ネクスウィル)は、訳あり不動産の専門買取サービス「ワケガイ」を提供しています。老朽化した空き家や共有持分付き物件、再建築不可、ゴミ屋敷、さらには事故物件まで、通常の市場では買い手がつきにくい不動産にも積極的に対応しています。
「相続したものの管理ができない」「固定資産税が重い」「他の共有者と連絡が取れない」といった複雑な状況でも、専門スタッフと士業が連携し、最短即日での現金買取が可能です。
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まとめ
空き家の放置は、単なる未使用の不動産にとどまらず、倒壊や火災の危険、行政指導、親族間の対立、経済的負担など、多くのリスクを生み出します。これらは時間が経つほど複雑化・深刻化する傾向があるため、「そのうち処分しよう」と考えて先延ばしにすることが、かえって大きな負担につながります。
空き家の状況や家族の意向に応じて、売却・解体・寄付などの処分方法を早めに検討し、必要に応じて専門家に相談することが重要です。また、処分の際には、登記の確認や譲渡所得税、解体費用など実務的なポイントにも目を向けましょう。
リスクを最小限に抑えるためには、「放置しない」ことが最大の対策です。早めの行動で、将来の安心を手に入れてください。
運営団体 株式会社ネクスウィル 2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。 |