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離婚の際には、夫婦で築いた財産をどのように分けるのかが重要な問題となります。離婚時の財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3種類があることをご存知の方も多いでしょう。
しかし、実際に財産分与を行う際には、それぞれの方法の特徴や注意点を理解しておく必要があります。家やマンションなどの不動産の扱いについては、ローンの有無や売却の方法など、より複雑な問題が生じることもあるためです。
そこで本記事では、離婚時の財産分与について、3種類の方法の詳細と、家を含む財産分与の進め方について詳しく解説します。
目次
離婚時の財産分与には3種類ある
財産分与とは、離婚する際に、夫婦が結婚生活の中で協力して築き上げた財産を公平に分配することをいいます。
離婚する夫婦がそれまで暮らしていた建物やマンションなどの不動産がある場合には、その不動産も財産分与の対象になります。
- 清算的財産分与
- 扶養的財産分与
- 慰謝料的財産分与
それぞれ詳しく解説します。
清算的財産分与
清算的財産分与は、3種類の財産分与方法のなかでも一般的な方法です。この手法では、夫婦が婚姻中に築いた財産を、それぞれの貢献度に応じて分配します。
例えば、夫が会社員として収入を得ていた一方で、妻が専業主婦として家事労働を行っていた場合、妻の家事労働も夫婦の財産形成に貢献したと見なされ、財産分与を受ける権利があると認められます。
たとえ不倫やDVなどの離婚原因を作った有責配偶者であっても、婚姻中の貢献度に応じて財産分与を請求できます。ただし、有責配偶者の分与割合は、裁判所の判断により減額される可能性があります。
清算的財産分与は、夫婦間の話し合いで決定することが理想的ですが、合意に至らない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。調停でも合意できない場合は、審判や訴訟に移行することになります。
扶養的財産分与
扶養的財産分与は、離婚後に経済的に困窮すると予想される配偶者を扶養するために行われる分与方法です。この方法が適用されるケースとしては、離婚後に病気や障害により働けない場合、長年専業主婦(夫)として過ごしてきたため今後の収入が不透明な場合。あるいは、高齢であるために就職が難しい場合などが挙げられます。
扶養的財産分与を行う際には、夫婦間で話し合いを行い、経済的に余裕のある側が相手に対して、生活費として一定額を定期的に支払うことを取り決めます。支払い期間は、扶養を必要とする配偶者の状況に応じて決定されます。
ただし、扶養的財産分与は、あくまでも離婚後の生活を支援するための制度であり、永続的に支払いを続ける義務はありません。扶養を受ける側の状況が改善された場合や、再婚した場合などには、支払いを停止することができます。
慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与は、離婚の原因を作った配偶者が、相手に対して精神的苦痛に対する償いとして行う分与方法です。不倫やDVなどが原因で離婚に至った場合に、慰謝料とは別に財産分与の一部として支払いが行われます。
慰謝料は金銭で支払われるのが一般的ですが、慰謝料的財産分与では、不動産や株式など金銭以外の財産でも支払いが可能です。ただし、慰謝料的財産分与を請求するためには、離婚成立から2年以内に手続きを行う必要があります。これに対し、慰謝料請求は離婚成立から3年以内に行えば認められます。
財産分与において、基本的に贈与税は発生しませんが、一方の配偶者に極端に多くの財産が分与された場合には、贈与とみなされ課税対象になる可能性があります。税理士などの専門家に相談し、適切な手続きを行うことが大切です。
関連記事:離婚時に財産分与をしないで済む方法はある?法的取り決めや交渉手段について解説
離婚時の財産分与で家を分ける方法
離婚時に住まいの財産分与を行う際には、以下のような選択肢が発生します。
- 売却して現金にする
- 片方が家に住み、もう片方は相当の現金を受け取る
次項より、個別にみていきましょう。
売却して現金にする
家やマンションを売却して現金化し、それを分け合う方法は、財産分与の1つの選択肢です。
まず、住宅の査定を複数の不動産会社に依頼し、それぞれの査定額の根拠を確認することが重要。不動産会社によって査定額が異なる場合があるため、納得のいく回答を得られるかどうかを確認しましょう。
次に、不動産会社が算出した査定額と、住宅ローンの残債を比較します。この関係性によって、現金化までの道筋が変わってきます。
関連記事:離婚時の財産分与で税金は発生するのか?課税額や回避するポイントとは
アンダーローンの状態
住宅の査定額が住宅ローンの残債を上回る「アンダーローン」の状態であれば、売却して得た資金で住宅ローンを完済し、残った金額を夫婦で平等に分け合うことができます。
これが最も簡単な方法ですが、住まいに買い手が見つかり、不動産売却が完了するまでは財産分与が終わらないという点に注意が必要です。売却までの期間や、売却価格が査定額を下回る可能性についても考慮しておくべきでしょう。
オーバーローンの状態
一方、住宅の査定額が住宅ローンの残債を下回る「オーバーローン」の状態では、自己資金で残債を完済して売却するか、任意売却によって住宅を売却するかの選択肢があります。
任意売却とは、金融機関の同意を得た上で、住宅ローンの残債がある状態でも不動産を売却できる方法です。任意売却であれば、金融機関の了承のもと、ローンが完済できなくても抵当権を解除して売却することが可能。
ただし、任意売却は本来、住宅ローンの返済が困難になった際の最終手段とされているため、信用情報に金融事故としての履歴が残ってしまう可能性があります。
片方が家に住み、もう片方は相当の現金を受け取る
財産分与の方法として、夫婦のどちらか一方が住宅をそのまま引き取り、もう一方は住宅の評価額に相当する現金を受け取るという選択肢があります。
この方法を選択する際には、まず住宅の評価額を正確に算出する必要があります。固定資産税の納税通知書を確認したり、不動産鑑定士に依頼したりすることで、客観的な評価額を知ることができます。
評価額が決まったら、住宅を引き取る側と現金を受け取る側を決めます。住宅を引き取る側は、算出された評価額の半分に相当する金額を、現金を受け取る側に支払うことになります。この方法は、子どもの教育環境を維持したい場合や、引越しのコストや手間を避けたい場合に有効です。
ただし、この方法で注意すべき点は、住宅ローンの残債についてです。住宅を引き取る側が、住宅ローンの残債をそのまま引き継ぐことになるため、返済能力があるかどうかを慎重に見極める必要があります。
離婚後もどちらかが家に住む場合、ローンの残債があればどうなる?
では、離婚後もどちらかが家に住みたいと考えるなら、ローンの残債があればどうなるのでしょうか。以下より、ケース別に解説します。
ローンの借主が住む場合
財産分与の方法として、住宅ローンの名義人が住宅をそのまま引き取り、住み続ける場合があります。この場合、住宅ローンの返済は名義人が引き続き行い、もう一方の配偶者には支払い義務はありません。
ただし、もう一方の配偶者が住宅ローンの連帯保証人になっている場合は、注意が必要です。連帯保証人とは、借主が債務を返済できなくなった場合に、借主と同等の責任を負う立場のことを指します。もし、住宅ローンの名義人が返済不能になった場合、その債務は連帯保証人に請求されることになります。
連帯保証人が債務の返済を滞納すると、個人信用情報機関に延滞情報が登録され、いわゆる「ブラックリスト」に載ってしまう可能性があります。離婚したからといって、自動的に連帯保証人の責任から外れることはできないため、十分な注意が必要です。
連帯保証人の責任から外れるためには、以下の3つの方法が考えられます。
- 連帯保証人の変更:別の人物に連帯保証人を引き継いでもらう
- 住宅ローンの借り換え:新たな住宅ローンに切り替え、連帯保証人を外す
- 持ち家の売却:住宅を売却し、住宅ローンを完済する
ただし、これらの方法を実行するには、いずれも金融機関の同意が必要不可欠です。金融機関との交渉は、時間と労力を要する場合があります。
離婚の際には、住宅ローンの連帯保証人についても必ず確認し、両者で話し合いを行うことが重要です。
ローンを借りていない方が住む場合
財産分与で、住宅ローンの非名義人が家に住み続けることになった場合、住宅ローンの返済状況について十分な注意が必要です。
例えば、離婚後に妻が家に住み続け、夫が住宅ローンの返済を続けるケースを考えてみましょう。この場合、夫の住宅ローン返済が滞ると、最悪のケースでは妻が家から追い出されてしまう可能性があります。
妻にとって、離婚後の生活基盤は元夫の住宅ローン返済に依存していることになります。もし、その支えが失われれば、妻の生活自体が崩壊しかねません。
金融機関が、住宅ローンの名義人が家に住んでいないことを知ると、契約違反として一括返済を求められる可能性もあります。その場合も、住む場所を失ってしまうリスクがあります。
ペアローンを借りている場合
夫婦でペアローン(夫婦連帯債務型住宅ローン)を組んでいる場合、離婚後にいずれかが住み続けるためには、ローンの借り換えや名義変更などの対策が必要不可欠です。
ペアローンは、夫婦が連帯して住宅ローンを返済する契約です。そのため、一方が家に住まなくなると、契約違反とみなされる可能性があります。いずれか一方が返済を滞納すると、家から退去を求められるリスクもあります。
こうした事態を避けるために、以下のような対策が考えられます。
- 金融機関と交渉し、住宅ローンを単独名義に変更する
- 新たな住宅ローンに借り換え、ペアローンを解消する
- 家に住み続ける側が、もう一方の持ち分を買い取る
- 家に住み続ける側が、住宅ローンの返済を一手に引き受ける
いずれの方法を選択する場合も、金融機関との交渉が必要となります。買い取りや返済の引き受けには、十分な資金力が求められます。
離婚時の財産分与で家を手放すなら注意するべきポイント
離婚時の財産分与で家を手放すなら、次のポイントにも留意しましょう。
- 勝手に売却されるケースがある
- 基本は協議を行い、難航したら調停を申し入れる
それぞれ詳しく解説します。
勝手に売却されるケースがある
財産分与は、夫婦が互いの合意のもとに進めるべきものですが、なかには一方の配偶者が共有財産である家を、もう一方の同意なしに売却してしまうケースがあります。このような事態を防ぐ上では、民事保全制度の1つである「仮差押え」を活用できます。
仮差押えとは、本案判決が確定する前に、係争中の資産を仮に差し押さえる手続きを指します。この手続きを家庭裁判所に申し立てることで、相手方が一方的に資産を処分することを防ぐことが可能です。
不動産に対して仮差押えの登記がなされると、不動産会社や潜在的な買主に対して、その物件が係争中であることが明示され、相手方による勝手な売却を阻止できます。
基本は協議を行い、難航したら調停を申し入れる
財産分与を円滑に進めるためには、夫婦が冷静に、かつ誠実に話し合いを行うことが重要です。しかし、離婚という感情的に大きな影響を受ける状況下では、建設的な話し合いが難しいこともあるでしょう。
話し合いが難航する場合、離婚前であれば「離婚調停」を、離婚後であれば「財産分与請求調停」を家庭裁判所に申し立てることができます。調停では、調停委員が夫婦の間に入り、公平な立場から話し合いを進めていきます。ただし、以下の2点に注意が必要です。
- 財産分与請求調停は、離婚後2年以内に申し立てる必要がある
- 調停で合意に至らない場合は、裁判または審判での解決を求めることになる
調停を有利に進めるためには、財産分与に関する法律知識や交渉術が求められます。自分だけで対応するのが難しいと感じる場合は、経験豊富で信頼できる弁護士に依頼することを検討しましょう。弁護士は、法的な観点からアドバイスを提供し、夫婦間の合意形成を促進してくれます。
まとめ
離婚時の財産分与には、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3種類があり、それぞれの特徴と注意点を理解しておくことが重要です。家を含む不動産の財産分与では、売却して現金化する方法や、一方が住み続ける方法など、様々な選択肢があります。住宅ローンが残っている場合は、返済方法や連帯保証人の扱いにも注意が必要です。
財産分与の話し合いがうまくいかない場合は、調停や仮差押えなどの法的手段を検討することもできます。離婚時の財産分与は、将来の生活設計に大きな影響を与える重要な問題です。
専門的な知識を持つ弁護士や司法書士、税理士などのプロに相談し、適切なアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。
運営団体 株式会社ネクスウィル 2019年1月29日設立。訳あり不動産の買取を行う不動産会社。相続やペアローンによる共有持分、空き家、再建築不可物件、借地、底地など、権利関係が複雑な不動産を買い取り、法的知識や専門知識を以って、再度市場に流通させている。 |