共有不動産における共有持分や明け渡し請求は、共有者間でのトラブルになり得ます。
しかし、一部の共有者が不動産を独占して使用する場合、他の共有者はどのようにすれば自己の権利を守り、公平な利益を確保できるのでしょうか。
本記事では、そんな状況で有効な共有持分の明け渡し請求について解説します。共有不動産に関する紛争を解決し、共有者各自の利益を保護するためにも、しっかりと把握しておきましょう。

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共有持分の窓口の詳細はこちら占有している共有者への明け渡し請求は原則できない

共有者には共有物を使用する権利があるため、単独使用だけを理由に直ちに明け渡しを求められるとは限りません。
共有者の一人が共有不動産を単独で使っていても、その共有者には持分に基づいて共有物全体を使用する権利があるため、他の共有者が直ちに明け渡しを求められるわけではありません。
最高裁判例でも、持分の過半数を持つ共有者だからといって、少数持分の共有者へ当然に明け渡しを請求できるわけではないとされています。
一方、共有物を誰が使用するかは「管理に関する事項」です。原則として、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決められます。2023年4月1日施行の改正民法では、現に共有物を使用する共有者がいる場合でも、この多数決ルールを適用できることが明文化されました。
そのため、明け渡しの可否は単独使用の事実だけでなく、共有者間の従前の合意や現在の使用権原、過半数による使用方法の決定などを踏まえて判断する必要があります。
明け渡し請求ができない民法上の規定
民法249条1項では、各共有者は共有物の全部について、持分に応じた使用ができるとされています。
したがって、共有者が単独で使用しているからといって、権限のない第三者による不法占拠と同じ扱いにはなりません。
ただし、共有者間で使用方法が決まっていない場合は、持分の価格の過半数により、現在の使用者とは別の共有者に使用させる旨を決定できます。この決定に基づき、従前の使用者へ明け渡しを求められる余地があります。
過去の共有者間の決定に基づいて現在の共有者が使用しており、新たな管理上の決定がその共有者に「特別の影響」を及ぼす場合は、本人の承諾が必要です。また、配偶者居住権など別の使用権原が成立していれば、過半数の決定だけで消滅させることはできません。
したがって、「請求する側の持分が50%を超えていれば必ず明け渡しを請求できる」と一律に判断するのではなく、現在の占有根拠まで確認することが重要です。
共有不動産の明け渡し請求ができるケース

協議内容への違反や協議拒否、実力行使、建築中など、占有の経緯によって明け渡しを検討できる場合があります。
共有不動産の明け渡し請求を行えるケースとしては、次の要件が挙げられます。
- 協議内容を無視して占有し続けている
- そもそも使用方法の協議を行おうとしない
- 実力行使で占有している
- 建物が建設中である
以下より、詳しく解説します。
協議内容を無視して占有し続けている
共有者間で決定された使用方法を一部の共有者が無視し、独自に不動産を占有する行為は、他の共有者による明け渡し請求の対象となり得ます。
特に、協議により決定された内容が明確であり、その指示に従わない占有が確認された場合、法的な介入を通じて明け渡しを求めることが可能です。
そもそも使用方法の協議を行おうとしない
共有不動産の使用方法に関する協議を意図的に避ける行為は、共有物の公平な管理を妨げるものとみなされます。
もし一部の共有者が協議を拒否し続ける場合でも、持分の過半数を有する共有者の同意があれば、法的手続きを通じて明け渡しを求めることが認められます。このような状況では、協議拒否を理由に占有を継続することは、法的に支持されることはありません。
実力行使で占有している
実力行使による不動産の占有は、法的な観点から厳しく制裁されます。具体的には、他の共有者の意向を無視し、強制的に不動産を占有する行為が該当します。
このような場合、被害を受けた共有者は、占有者に対して明け渡しを求める権利が認められ、場合によっては損害賠償請求も可能です。
建物が建設中である
共有土地で一部の共有者が独断で建築工事を進めている場合は、その工事が共有物の「変更」にあたるかを確認する必要があります。
共有物の形状または効用を著しく変更する行為には原則として共有者全員の同意が必要で、著しい変更を伴わない軽微な変更であれば持分の過半数で決定できます。
工事中であれば、権利関係や緊急性などに応じて、建物建築禁止の仮処分など完成前に現状を保全する手続も検討対象です。
建物が完成した後も、金銭補償だけが唯一の解決方法になるわけではありません。建物収去や土地明渡しを求められるかは、建築の経緯、他の共有者の承諾、工事内容、持分関係などによって結論が変わります。
占有状態を放置し続けるリスク

長期の単独占有や第三者への占有移転によって争点や手続が複雑になることがあるため、早めの対応が必要です。
共有持分を占有されているなら、放置し続けることには以下のリスクが伴います。
- 長期の単独占有によって取得時効が争点になることがある
- 占有が第三者へ移ると、明け渡しの強制執行が難しくなることがある
それぞれ詳しく解説します。
「取得時効」でいずれは所有権が認められる
共有者の一人が長期間にわたって共有不動産を単独使用しているだけで、他の共有者の持分まで当然に時効取得できるわけではありません。
民法162条の20年または10年という期間に加え、「所有の意思」をもって平穏かつ公然に占有していることなどが要件となります。
共有者にはもともと自己の持分に基づく使用権があるため、他の共有者の持分についても自分だけの所有物として占有していたと評価できるかが重要です。法務省の共有制度に関する検討資料でも、共有者による取得時効には自主占有に相当する事情が必要と整理されています。
そのため、固定資産税を負担していることや長期間にわたり管理していることだけを理由に、共有不動産全体の単独所有が認められるとは限りません。取得時効が問題になる場合は、占有開始の経緯や共有者間の合意、占有の性質などを個別に確認する必要があります。
(参考:e-Gov 法令検索「民法」)
「占有の移転」をされると明け渡し請求ができなくなる
占有が第三者へ移っても、明け渡しを求める権利そのものが当然に消滅するわけではありません。
問題になるのは、訴訟中などに占有者が変わることで、判決を得た後の強制執行が難しくなる可能性があることです。
こうした事態に備える手続として、占有移転禁止の仮処分があります。将来の明渡請求を保全するために現在の占有関係を固定し、第三者への占有移転によって強制執行が困難になる事態を防ぐための制度です。
占有者が第三者へ交代するおそれがある場合は、明渡訴訟だけでなく、仮処分による保全が必要かどうかも検討対象となります。実際の対応は、新たな占有者がどのような権原で使用しているかによっても異なります。
明け渡し請求ではなく「使用料の請求」も検討しよう
共有不動産の一部の共有者が独占的に物件を使用している場合、他の共有者は占有者に対して使用料の請求を検討することが可能です。
この使用料は、事実上の賃貸関係に相当し、共有物件の実際の使用状況に基づき、持分に応じた不動産の利用価値を金銭で補償するものです。
使用料の算定には、周辺の類似物件の市場家賃を参考にし、必要に応じて不動産専門家の助言を得ることが推奨されます。
占有者に対して行える不当利得返還請求とは
共有者の一人が共有不動産を単独で使用している場合、明け渡しとは別に、使用対価によって共有者間の利益を調整する方法があります。
2023年4月1日施行の改正民法249条2項では、別段の合意がない限り、共有物を使用する共有者は他の共有者に対して、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うことが明文化されました。
事案によっては、不当利得返還請求が問題になることもあります。不当利得返還請求権など一般の債権の消滅時効は、原則として「権利を行使できることを知った時から5年」または「権利を行使できる時から10年」のいずれか早い時点で完成します。そのため、常に10年間さかのぼって請求できるわけではありません。
2020年4月1日より前に債権が生じた場合などは、経過措置によって改正前の民法が適用されることがあります。実際に請求できる期間は、請求権が生じた時期や権利行使が可能だと認識した時期などによって異なるため、起算点と適用法を分けて確認する必要があります。
使用料の請求を行えないケース
共有不動産の管理において、1人の共有者が物件を独占して使用している場合、通常、他の共有者はその使用に対して使用料を請求する権利を有します。
しかし、特定の条件下では、使用料の請求が認められない例外状況が存在します。
1つの例外は、共有者間で不動産の無償使用について明確な合意がなされている場合です。この種の合意は、実質的に「使用貸借契約」と見なされ、一方の共有者が他の共有者に対して物件を無償で使用する権利を与えるものです。
契約書が形式的に作成されない場合でも、口頭での約束があれば、その合意は有効とみなされ、その結果、賃料の請求は認められないことがあります。実際に、契約書が存在しない状況下でも使用貸借契約が認められた事例が裁判所により判示されています。
遺産相続が発生した場合の共有状態でも、特殊な扱いがされるケースがあります。特に、相続開始前から被相続人と一緒に住んでいた相続人がいる場合、この相続人には無償で物件を使用する特別な権利があると推定されることがあります。
明け渡し・賃料請求ができない場合の対処法
明け渡しや賃料請求ができない場合、以下の対処法を検討しましょう。
- 自分の持分のみを売却する
- 共有物分割訴訟を起こす
次項より、個別に解説します。
自分の持分のみを売却する
1つの選択肢は、自己の持分を専門の買取業者に売却することです。
共有不動産や持分売買を専門に取り扱う業者は、共有持分の買取において市場価値に近い価格を提示することがあります。
ただし、共有不動産の持分を買取っても、買主は直ちに不動産を自由に使用できるわけではないため、適切な買主を見つけるまでに時間がかかることが予想されます。
買取業者を通じて取引を行う場合、数日から数週間で処理が完了することもあり得ますが、市場状況や不動産の特性によってはより長い時間が必要になる場合もあります。自分の持分だけを売った場合の金額が気になるなら、まずは共有持分の簡易査定ができるので以下より試してください。

共有物分割訴訟を起こす
明け渡しや使用対価の請求だけでは共有者間の問題を解消できない場合、共有物分割請求によって共有状態そのものを解消する方法があります。
裁判所は、共有物を物理的に分ける「現物分割」や、一人または複数の共有者が不動産を取得して他の共有者へ持分相当額を支払う「賠償分割」を命じることができます。これらの方法で分割できない場合や、分割によって不動産の価格が著しく下がるおそれがある場合には、競売による分割が選択されます。
賠償分割では、不動産を取得する共有者の支払能力も重要な判断要素です。ただし、現在占有している共有者に資金がないという理由だけで、自動的に競売になるわけではありません。不動産の性質や利用状況、各共有者の希望などを踏まえて、具体的な分割方法が判断されます。
共有不動産の明け渡し請求についてよくある質問
共有不動産の明け渡し請求についてよくある質問は、以下のとおりです。
- 持分が50%ちょうどでも、単独で明け渡しを決められますか?
- 共有者が単独で使用している場合、明け渡しの代わりに使用料を請求できますか?
- 持分の過半数で使用方法を決めれば、必ず明け渡してもらえますか?
それでは、それぞれの質問とその回答を紹介します。
持分が50%ちょうどでも、単独で明け渡しを決められますか?
原則として、持分が50%ちょうどでは単独で管理に関する事項を決められません。民法252条では、共有物の管理に関する事項は「各共有者の持分の価格に従い、その過半数」で決めるとされています。したがって、持分50%の共有者は、ほかの共有者の賛成を得て過半数に達する必要があります。
共有者が単独で使用している場合、明け渡しの代わりに使用料を請求できますか?
共有者間に無償使用などの別段の合意がなければ、単独で使用している共有者に対し、自己の持分を超える使用分について対価を求められる場合があります。民法249条では、共有物を使用する共有者が、ほかの共有者に対して持分を超える使用の対価を償還する義務を定めています。
持分の過半数で使用方法を決めれば、必ず明け渡してもらえますか?
過半数の決定があっても、必ず明け渡しが認められるとは限りません。たとえば、共有者間の従前の決定に基づいて使用している共有者に「特別の影響」を及ぼす場合には、その共有者の承諾が必要です。また、配偶者居住権など別の使用権原が存在する場合は、過半数による管理上の決定だけではその権利を消滅させられません。現在の使用にどのような根拠があるかまで確認する必要があります。
まとめ
共有不動産に関する問題は、共有者間での合意が難しい場合が多く、特に共有持分や明け渡し請求に関しては複雑なケースが存在します。
明け渡し請求以外にも、使用料請求の可否、不当利得返還請求、持分売却、共有物分割訴訟など、な解決策があります。一方で、それぞれの方法は具体的な事情や法的な条件によって適用が異なります。
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