こんにちは。ワケガイ編集部です。
不動産が含まれる相続では、「誰が不動産を相続するか」「どう分けるか」「どう管理・処分するか」といった点で対立が起きるケースがあります。その際に特に問題になりやすいのが、不動産関連のトラブルです。
不動産相続トラブルとは、不動産特有の分けにくさや名義の複雑さ、相続税などが原因で、相続人間に生じる法的・感情的な対立のことです。
本記事では、不動産相続におけるトラブルのパターン例に加え、その解決策を詳しく解説します。相続を「争続」にしないために、トラブルの全体像とその対応策を正しく把握しておきましょう。
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目次
- 1 不動産相続トラブルが起こりやすい理由とは
- 2 不動産相続でよくあるトラブル例
- 3 不動産相続トラブルが起きた場合の解決策
- 4 不動産相続トラブルについて相談できる専門家
- 5 不動産相続のトラブルを未然に防ぐための対応策
- 6 不動産相続トラブルに関する注意点
- 7 不動産相続のトラブルでお困りなら「ワケガイ」にご相談ください!
- 8 まとめ
不動産相続トラブルが起こりやすい理由とは
不動産が関係する相続では、金銭だけを分ける場合と違い、思わぬトラブルが発生しやすくなる理由が存在します。具体的には、以下のとおり。
- 理由①:不動産は資産価値が大きいことが多いから
- 理由②:公平な分配が難しいため
- 理由③:遺言がないと分割の判断基準があいまいになるから
それぞれ個別にみていきましょう。
理由①:不動産は資産価値が大きいことが多いから
相続財産のなかで不動産が占める割合は決して小さくありません。都市部にある住宅や土地であれば、数千万円単位の価値がつくこともあり、現金や預貯金よりもはるかに大きな金額になることがあります。そのため、不動産を誰が受け取るかが相続人の間で争点となりやすく、他の財産だけでは調整が効かないケースが多いのです。
さらに、不動産は評価方法によって価値に差が生じるため、相続人間で「公平さ」に対する認識が揃いにくい点も問題です。
たとえば、不動産会社の査定では3,000万円と出ても、相続税評価では2,000万円台だったという例は珍しくありません。このギャップが「実際にはもっと高いはず」「税務署に合わせるのは不満だ」といった感情的な対立につながることがあります。
理由②:公平な分配が難しいため
不動産は現金のように「ぴったり割る」ということができません。
具体例を挙げると、3人の相続人がいる場合に土地を3等分しようとしても、立地や形状によって価値は均一にならず、誰かが得をした、損をしたという認識が生まれがちです。その結果、「誰がどこを取るか」で意見が食い違い、話し合いが長引く原因になります。
理屈で「平等に」と言っても、実際には人間関係や感情が絡み合い、簡単には線を引けません。だからこそ、公平な分配をめぐって対立が生じやすいのが、不動産相続の特徴といえます。
理由③:遺言がないと分割の判断基準があいまいになるから
相続が発生したとき、被相続人が遺言書を残していない場合、法定相続分に基づいて遺産分割を行うのが原則です。
ただし、この法定相続分が現実の生活や家族関係に合わないことはよくあります。たとえば、長年親の介護をしてきた子が「その分を考慮して多めに相続したい」と考えても、他の相続人から反発されることがあります。
遺言があれば、被相続人の意思に基づいた分割が可能になり、それに従って処理を進められます。しかし、何もない状態では、誰が何を相続するかを一から全員で話し合わなければならず、話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所での調停や審判にまで進む可能性も出てきます。
不動産相続でよくあるトラブル例
このように、不動産が関係する相続では、現金とは異なり「分けにくさ」や「扱いにくさ」が問題になります。そのため、実際の相続手続きにおいては、さまざまな局面で対立や停滞が起こりがちです。
代表的なものとしては、次の6つが挙げられます。
- トラブル例①:誰が不動産を相続するかで揉める
- トラブル例②:不動産の評価額に納得できず争いになる
- トラブル例③:現物分割・換価分割など「分け方」で対立する
- トラブル例④:名義変更や共有状態が原因で処分できない
- トラブル例⑤:空き家の管理・修繕を誰が負担するかで揉める
- トラブル例⑥:相続税・固定資産税の負担に対する意見が食い違う
以下より、個別に解説します。
トラブル例①:誰が不動産を相続するかで揉める
相続人が複数いる場合、「誰が資産価値のある不動産を相続するか」をめぐって対立することがあります。
特に問題になるのは、相続人の一人が親と同居していたり、長年介護を担っていたケースです。「自分は世話をしてきたから多くもらって当然」と考える人と、「法律通りに均等に分けるべき」と主張する人がぶつかることになります。
法定相続分はあくまで基準であって、現実の貢献度や関係性とは一致しません。また、「親は家を自分に残すつもりだった」といった口頭でのやり取りが、他の相続人にとっては証拠にならないため、不信感を生む要因にもなります。
関連記事:相続した不動産は3年以内に売却した方がお得!「相続税の取得費加算」の特例を詳しく紹介
トラブル例②:不動産の評価額に納得できず争いになる
前述のとおり、不動産は評価方法によって金額に大きな差が出る財産です。たとえば、相続税の計算には「路線価」「固定資産税評価額」が使われますが、実際に売却しようとすると「実勢価格」が大きく異なる場合があります。
これにより、相続人間で「もっと高く見積もるべき」「税金ばかり優先して評価を下げすぎだ」といった不満が噴出します。
加えて、不動産会社による査定も担当者や会社ごとにバラつきがあり、1社では信頼性に欠けるとの意見が出ることもあります。こうした状況では、金額への納得感が得られず、「損をした」「得をしている」といった感情的な対立を生みがちです。
関連記事:相続した不動産の評価方法とは?不動産の形態別に詳しく紹介
トラブル例③:現物分割・換価分割など「分け方」で対立する
不動産を相続人で分ける場合、最も悩ましいのが「どう分けるか」という問題です。ひとつの不動産をそのまま分けて使うことは難しく、分割方法としては「現物分割」「代償分割」「換価分割」などがあります。これらの方法にはそれぞれ長短があり、相続人の希望が一致しないと簡単には決まりません。
たとえば、ある相続人は「家を売って現金で分けるべき」と考えていても、別の相続人は「住み続けたいから売却には反対」と主張することがあります。また、代償分割で一人が不動産を取得して他の相続人に金銭を支払う案も、支払能力や金額の妥当性で揉めることが少なくありません。
トラブル例④:名義変更や共有状態が原因で処分できない
不動産を相続したあとも、名義変更(相続登記)をせずに放置してしまうケースは意外と多くみられます。
この状態では、不動産の売却や担保設定、リフォーム工事の契約など、ほとんどの処分行為を実施できません。相続登記が義務化された今でも、「面倒そう」「費用がかかりそう」といった理由で後回しにされがちです。
さらに、複数人で共有名義になっている場合には、原則として全員の同意がなければ売却などができません。もし共有者のひとりと連絡が取れなかったり、意見が対立していたりすると、話し合いは一歩も進まなくなります。
関連記事:相続不動産の名義変更を自分でするのはあり?必要書類や手続きの流れを解説
トラブル例⑤:空き家の管理・修繕を誰が負担するかで揉める
親が亡くなったあと、実家が空き家になることは珍しくないでしょう。この場合、誰が草刈りや修繕、雨漏りの対応などをするのかで相続人間に争いが生じかねません。
特に遠方に住んでいる相続人は、管理に関わる時間的・物理的な負担が大きいため、不公平感を訴えることが多いのです。一方で、近隣に住んでいる相続人が単独で管理を続けていると、「管理してやっている」という気持ちが強まり、他の相続人との温度差が広がってしまうでしょう。
また、費用負担に関しても、「自分は使っていないから払いたくない」といった主張が出やすく、話がこじれます。放置すれば固定資産税だけでなく、老朽化による近隣トラブルや行政指導のリスクも出てきます。
トラブル例⑥:相続税・固定資産税の負担に対する意見が食い違う
不動産を相続すると、相続税や毎年の固定資産税といった税負担が発生します。問題なのは、これらの税金を「誰が」「どのような割合で」負担するのかについて、あらかじめ明確な合意がないまま相続が進んでしまうことです。
なかには、相続人の一部が支払いに非協力的で、他の相続人に負担が偏るケースもみられます。
さらに、納税資金をどう工面するかという問題もあります。不動産しか相続しておらず、現金が手元にない場合、売却を検討せざるを得ません。しかし、売却に反対する相続人がいると足並みが揃わず、納税期限を過ぎて延滞税が発生するため非常にリスキーといえます。
関連記事:相続税の計算方法とは?基礎控除と4ステップの計算手順を解説
関連記事:不動産の「固定資産税」の計算方法とは?所有物件の課税額はいくらになる?
不動産相続トラブルが起きた場合の解決策
ここからは、前述したトラブル例に対応する実際の解決策を、問題の性質ごとに整理して解説します。
「①:相続に関するトラブル」の解決方法
不動産を誰が相続するかでもめた場合、相続人の意見や立場はしばしば平行線をたどります。こうした場面では、合意形成のプロセスそのものを見直す対策が有効です。
遺産分割協議をやり直す
いったん合意しかけたものの、後から不満が出てきたり、新たな情報が判明したりすることは珍しくありません。その場合は、相続人全員で再度集まり、遺産分割協議をやり直すことになります。
協議は全員の同意が必要であり、一部の相続人が非協力的だと前に進まなくなりますが、時間をかけて調整を図ることが可能です。
特に、不動産を巡る感情的な対立が激しい場合には、第三者である行政書士や司法書士が立ち会って「議事録を残しながら整理する」という進め方が現実的です。こうした手続きの積み重ねが、裁判所を介さずに解決するための重要な足場になります。
関連記事:遺産分割協議の進め方とは?話し合いを綺麗にまとめるための必要知識
家庭裁判所に調停や審判を申し立てる
協議による解決が難しいと判断された場合には、家庭裁判所に調停または審判を申し立てるという選択肢も出てきます。調停は、家庭裁判所に設置された調停委員会のもとで相続人同士が話し合いを行う制度で、第三者の視点から冷静な対話が促される点に意味があります。
一方、調停でもまとまらない場合には、裁判所が最終的に分割方法を決定する「審判」に移行します。これは裁判官による判断であり、強制力がある一方で、当事者の意向が完全には反映されないこともあるため、協議の段階での合意形成が望ましいとはいえます。
ただし「関係がすでに悪化している」「連絡が取れない相続人がいる」場合には、審判が現実的な解決手段となることもあります。
「②:不動産の評価に関するトラブル」の解決方法
不動産の価値に対する見解が食い違うと、遺産の配分にも支障が生じます。ここからは、そのようなトラブルを避けるため、納得感のある評価を下す方法を紹介します。
複数の不動産業者・鑑定士に査定を依頼する
1社だけの査定に依存すると、金額の妥当性に疑問を抱かれることがあります。特に相続では、誰もが納得できる公平な基準が必要になるため、複数の不動産会社や、不動産鑑定士に依頼して複数の査定結果を比較することが有効です。
不動産鑑定士は国家資格者であり、特に遺産分割や調停などで正式な評価書が必要な場面では信頼性が高く、資料としての価値も認められます。複数の視点から評価額を照らし合わせることで、相続人全員が「この金額であれば納得できる」と感じやすくなる点が利点です。
評価方法ごとの違いを把握する
不動産の価値は、「実勢価格」「路線価」「固定資産税評価額」など、使う目的によって異なる評価基準が用いられます。相続税の申告では路線価が使われるのが一般的ですが、売却時に使われるのは市場価格、つまり実勢価格です。
相続人の間でこうした違いが認識されていないと、「評価額が低すぎる」「高すぎる」という不満が噴き出しやすくなります。評価方法の違いをきちんと整理し、どの評価をどの目的に使っているのかを全員が理解するだけでも、不要な対立を減らす効果があります。
「③:分割方法に関するトラブル」の解決方法
不動産を複数の相続人でどう分けるかという問題は、制度上の選択肢があるとはいえ、実際の利害や事情を踏まえると簡単に割り切れないことも少なくありません。そのため、まずは基本的な分割方法を正しく理解し、そのうえで現実的な調整を模索しましょう。
不動産の分割による分配
不動産を複数の相続人で分ける際には、分け方そのものがトラブルの火種になることもあります。以下のような代表的な分割方法があるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
- 現物分割:不動産そのものを相続人同士で物理的に分ける方法。土地の形状や立地によって価値が不均衡になりやすく、現実には難しい場面が多い。
- 代償分割:一人が不動産全体を取得し、他の相続人に金銭を支払って調整する方法。取得者には多額の資金が必要となる。
- 換価分割:不動産を売却し、その代金を分配する方法。金銭で分けるため公平性が高いが、不動産を手放したくない相続人がいる場合には調整が難航することもある。
これらの分割方法は、不動産の種類や家族構成、相続人同士の関係性によって向き不向きがあります。無理に単独で判断せず、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
分筆して物理的に分ける
土地であれば、「分筆」という手続きを行って複数の地番に分け、それぞれを別々に相続人へ割り当てるという方法もあります。ただし、すべての土地で分筆が可能というわけではなく、接道義務や最小面積、用途地域の制限など、法的・技術的な要件をクリアする必要があります。
また、分筆後に各相続人が取得した土地の利用価値や固定資産税の負担が変わることもあるため、単に「分けられるかどうか」だけで判断するのではなく、分筆後の管理や活用も視野に入れた検討が求められます。
不動産登記の専門家である司法書士や、測量士の意見を取り入れて、実行可能性を慎重に判断しましょう。
関連記事:土地の分筆とは?登記手続きの流れや費用、書類について詳しく紹介
「④:名義に関するトラブル」の解決方法
相続人が複数いる場合、不動産が共有名義になるケースは多くあります。ただし、この状態は自由に売却したり建て替えたりする際に全員の同意が必要となるため、いざというときに動きが取れなくなるリスクがあります。
共有名義をそのままにしておくと、管理の負担や税金の支払いが曖昧になり、放置や揉め事の原因になりかねません。早めの整理が望まれますので、その方法をみていきましょう。
共有者間で持分を整理する(買取・交換など)
共有名義になっている不動産については、相続人同士で持分の買取や交換を行うことで、名義を一本化する方法が考えられます。たとえば、家に住み続けたい相続人が他の相続人から持分を買い取ることで、単独名義に切り替えることができます。
この場合、買取価格をどう設定するかが焦点となります。実勢価格の査定や不動産鑑定士の意見を参考にすることで、当事者間の納得感を得やすくなります。
また、現金での支払いが難しい場合には、代物弁済や将来的な売却益の分配を契約に盛り込むなど、柔軟な交渉も可能です。重要なのは、「将来また揉める余地を残さないよう、合意内容を文書にして登記まで行うこと」と認識しましょう。
関連記事:不動産査定の方法とは?価格の決まり方から高く評価されるポイントまで解説
共有持分を第三者に売却する
もし共有者間での話し合いがまとまらない場合には、自分の持分だけを第三者に売却するという選択肢もあります。民法上、自分の共有持分は単独で処分することが認められているため、他の相続人の同意は不要です。ただし、一般的な市場での流通性は低く、買い手が限られるのが実情です。
そのため、共有持分の買取に特化した専門業者を利用するケースが増えています。価格は通常の不動産売却より低くなる傾向がありますが、共有関係から離脱したい人にとっては現実的な選択肢となり得ます。
第三者に売却した場合、今後の管理や処分に関して元の相続人と新たな所有者とのあいだで協議が必要になる可能性もあるため、売却前に今後の影響も見据えた判断が求められます。
「⑤:管理に関するトラブル」の解決方法
相続不動産の管理に関するトラブルは、早い段階で明文化しておくことで予防が可能です。こちらについても、具体的な方法を解説します。
管理ルールを文書化して共有する
相続人の間で、日常的な管理・修繕・清掃といった役割分担や費用負担のルールを明文化しておくと、誤解や不公平感を防ぎやすくなります。口約束に頼るのではなく、簡単な協議書として残しておくことで、将来的なトラブルの芽を摘むことができます。
特に、定期的な草刈りや固定資産税の支払いなど、発生が予測される管理項目については、金額の目安や分担比率を具体的に記載しておくとよいでしょう。
相続人が納得した上で署名・押印を行い、各自がコピーを保管しておく形でも実務上の効果はあります。状況に応じて、弁護士や司法書士にチェックを依頼することで、より法的安定性のある文書にすることも可能です。
信託契約を活用して管理権限を一本化する
不動産が共有状態のままでは、管理や処分のたびに全員の同意が必要となります。そこで、信託契約を活用して管理権限を特定の人物に集約する方法があります。
これは、「受託者」となる相続人に不動産の管理や運用の権限を委ねる制度で、民事信託あるいは家族信託として活用されています。
信託を活用すれば、修繕や賃貸、売却などの意思決定をスムーズに行えるため、遠方に住む相続人が複数いる場合や、家族間で機動的な対応が求められるときに有効です。
ただし、信託契約の設計には一定の法的知識が必要となるため、信託制度に詳しい専門家に依頼して契約書を作成するのが現実的です。管理の手間や合意形成の手続きに悩んでいる家庭にとって、検討する価値のある選択肢といえるでしょう。
「⑥:税金に関するトラブル」の解決方法
相続に伴う税金には、相続税だけでなく、毎年発生する固定資産税の負担も含まれます。問題は、こうした負担が発生するタイミングや責任の所在について、相続人間で明確に共有されていない場合が多いことです。
税負担をめぐる対立は感情面とも結びつきやすいため、最初からルールを整えておくことが望まれます。
固定資産税などの負担割合を決めておく
固定資産税は名義人に請求が届くため、単独で負担している相続人が不満を抱くといったトラブルを避けるには、費用の分担方法を事前に話し合い、割合や支払い方法を協議書として残しておくと安心です。
たとえば、「登記上の持分割合に応じて負担する」「誰が利用しているかに応じて費用分担を調整する」といったルールが考えられます。
このように文書化しておくことで、トラブルが発生した際に「言った・言わない」の水掛け論にならず、論理的に議論できます。費用の請求方法や振込口座も記載しておくと実務上の手間も減らせます。
納税資金の確保を目的に不動産の売却を検討する
相続税は基本的に現金での一括納付が原則とされていますが、相続財産が不動産に偏っている場合、現金が足りずに納税資金に困ることがあります。こうしたときには、不動産の売却によって納税資金を確保するという判断が現実的です。
ただし、売却には相続人全員の合意が必要であり、「思い出のある家を手放したくない」といった意見も出やすいため、納税期限までに意見をまとめるには一定の時間的余裕が必要です。
売却を前提とするなら、相続開始後できるだけ早く動き出し、査定や不動産会社の選定なども平行して進める必要があります。売却の決断は感情的な負担も伴いますが、資金繰りの現実と向き合ううえでは避けて通れない判断になることもあります。
不動産相続トラブルについて相談できる専門家
不動産相続には、相続人間の調整や税務対応、登記手続き、不動産の処分など、幅広い専門知識が求められます。そのため、トラブルを未然に防ぎ、スムーズに手続きを進めるには最適な専門家に相談する必要があります。
ここから、相談内容ごとに頼るべき専門家の役割を紹介します。
法的なアドバイスを受けるなら弁護士
相続トラブルが発生した際、法的な解決手段を検討する段階においては、弁護士の助言が求められます。遺産分割協議がまとまらない場合や、一部の相続人が協議に応じないといった状況では、家庭裁判所への調停申し立てや訴訟を視野に入れる必要が出てくるためです。
こうした法的手続きは、専門的な知識と的確な判断が求められるため、当事者だけで対応するのは現実的ではありません。
登記や相続手続きの実務には司法書士
相続が発生した後、不動産の名義変更や相続登記といった手続きが必要になります。これらは法的な義務であり、特に2024年からは相続登記の申請が義務化されたことで、対応を先延ばしにするリスクが高まりました。こうした実務に対応できるのが司法書士です。
司法書士は、登記申請の代理や相続人の調査、必要書類の収集、遺産分割協議書の作成補助など、手続き面を幅広くサポートしてくれます。
特に、共有名義での相続や、被相続人が長期間登記を変更していなかったケースなど、登記内容が複雑な場合にも的確に対応してもらえます。
関連記事:相続登記の費用はいくらかかる?司法書士への依頼費用や必要経費を金額例で徹底解説!
不動産の売却や評価は不動産業者・税理士に相談
「相続した不動産を売却したい」「現金化によって遺産分割を進めたい」と考える場合には、不動産業者のサポートが不可欠です。複数の業者に査定を依頼することで、実勢価格の妥当性を判断する材料がそろいます。
また、古家付き土地や再建築不可物件など、一般市場での評価が難しい物件については、専門業者による個別の提案が期待できます。
一方、相続税の申告や納税計画を立てる際には、税理士への依頼も必要です。
不動産の評価は、相続税の算定に直接影響を及ぼすため、適切な評価方法を選択する必要があります。実勢価格、路線価、固定資産税評価額といった複数の基準があるなかで、どの指標をもとに評価を行うかは、税務上の判断を伴うため、早い段階から相談しておきましょう。
不動産相続のトラブルを未然に防ぐための対応策
不動産相続をめぐるトラブルは、相続開始後に突然表面化するケースも少なくありません。しかし、事前に備えをしておくことで多くの問題は回避できます。
代表的な対応策としては、以下のものが挙げられます。
- 公正証書遺言を作成して相続方針を明確にしておく
- 家族で事前に不動産の活用・分割方針を話し合っておく
- 評価・税金・管理に関わるコストをあらかじめ共有しておく
- 家族信託や贈与を活用して権利関係を整理しておく
次項より、詳しく解説します。
公正証書遺言を作成して相続方針を明確にしておく
不動産の相続において最も深刻なトラブルの1つは、誰が不動産を引き継ぐかが不明確なまま相続が発生し、相続人同士で対立が生じるケースでした。こうした事態を防ぐためには、生前に「公正証書遺言」を作成しておくことが有効です。
公正証書遺言は、公証人が作成を補助し、原本を公証役場に保管する制度であるため、改ざんや紛失のリスクが低く、法的な有効性も高いとされています。また、明確に不動産の帰属を記載しておくことで、「遺産分割協議」が不要になる場合もあります。
例えば、実家を誰に相続させるのか、住み続けてきた子に残したいのか、あるいは売却を前提に複数人で分けるのかといった方針が明記されていれば、相続人の間での話し合いがスムーズになります。
関連記事:遺言書で不動産を指定するにはどうすればいい?適切な指定方法と必要書類を紹介
関連記事:公正証書とは?普通の契約書との違いや効力を解説
家族で事前に不動産の活用・分割方針を話し合っておく
「被相続人の意向がわからない」「家族で話し合ってこなかった」ことに起因する相続トラブルも多々あります。特に不動産は分けにくい財産であるため、漠然としたまま放置していると、分け方を巡って深刻な対立に発展することがあります。
例えば、長男が実家に住み続けたいと考えている一方で、他の兄弟姉妹は現金化を望んでいるというケースは典型です。このような状況では、事前に家族で不動産の活用方針や分割の考え方について率直に話し合っておくことが、最も有効な予防策となります。
話し合いの中では、「誰が住むのか」「いずれ売却するのか」「老朽化した場合の修繕費はどうするのか」といった具体的な論点を洗い出し、それに対する家族それぞれの意見を整理しておくことが重要です。
評価・税金・管理に関わるコストをあらかじめ共有しておく
不動産相続の現場では、評価額への不満や税金負担の不公平感、さらには管理業務の押し付け合いなど、財産そのものよりも「それにまつわるコストや労力」の分配が問題になることもあります。こうしたトラブルを防ぐ上では、事前にコスト面を家族で共有しておくことが有効です。
具体的には、不動産を相続した場合にどの程度の固定資産税がかかるのか、売却や維持にどれだけの費用が必要なのか、管理業務は誰が担うのかといった情報を、あらかじめ資料にまとめておくのがよいでしょう。
家族信託や贈与を活用して権利関係を整理しておく
「不動産の名義が高齢の親のままになっている」「将来的に判断能力の低下が懸念される」場合には、早めに権利関係を整理しておくことが望ましいです。こうしたケースで有効なのが、家族信託や生前贈与です。
家族信託とは、不動産の名義は親のままにしつつ、管理や処分といった実質的な権限を子などの「受託者」に移す制度です。これにより、親が認知症になったとしても、不動産の売却や修繕などの意思決定がスムーズに行えるようになります。
一方、生前贈与の利用に関しては、不動産の所有権を早めに移転しておくことで、相続発生時の混乱を避けるという選択肢もあります。ただし、贈与税の負担や登記手続き、他の相続人との公平性を踏まえる必要があるため、税理士や司法書士と連携して慎重に進めるべきです。
関連記事:不動産を生前贈与するのはあり?贈与税の計算方法やメリットを詳しく解説
不動産相続トラブルに関する注意点
ここからは、不動産を相続する際に特に留意するべき以下の事柄を解説します。
- 法律上の相続分と実際の貢献度は一致しないことが多い
- 相続人の数が多いほど協議は難航しやすい
- 一部の人が単独で判断・処分することはできない
- 専門家に相談せずに進めると将来のトラブルにつながる
それぞれ個別に解説します。
法律上の相続分と実際の貢献度は一致しないことが多い
相続における大きな誤解のひとつが、「法定相続分に従っていれば、誰も不満を持たないはずだ」という考えです。実際には、介護や生活費の負担など、被相続人に対して日常的に貢献してきた相続人ほど「自分は多くもらうべきだ」という思いを持つ傾向があります。
特に不動産のように金額が大きく、生活の基盤に関わる財産については、その感情がより強く表れます。たとえば「長男が親の面倒をずっと見てきたのに、他の兄弟と同じ取り分なのか」という不満が生まれると、協議は一気にこじれかねません。
法定相続分はあくまで形式的な目安に過ぎず、そこに「誰がどれだけ貢献したのか」という実情を加味するには、相続人同士の理解と歩み寄りが不可欠です。感情的な対立を防ぐには、最初の段階で「法と現実にはズレがある」ことを全員で認識しておくことが重要です
相続人の数が多いほど協議は難航しやすい
前述のとおり、相続人が複数いると意見の対立が起きやすくなりますが、特に人数が多くなると、その合意形成には想像以上の手間と時間がかかります。不動産は「簡単に分けられない財産」であるため、誰が取得するのか、どう活用するのかといった点で話し合いが難航しがちです。
たとえば、兄弟姉妹であっても、生活環境や経済状況が異なれば、「早く現金化したい」人と「家を残したい」人とで、根本的に意見が噛み合わないこともあります。さらに、関係が疎遠な相続人や、連絡が取りにくい親族が含まれる場合には、協議の場を設けるだけでも一苦労でしょう。
このように、人数の多さはそのまま調整の難易度や管理負担の増加につながります。相続トラブルのリスクを高める要因として、あらかじめ意識しておく必要があります。
一部の人が単独で判断・処分することはできない
不動産を共有名義で相続した場合、その不動産の利用や処分に関しては、原則として共有者全員の合意が必要です。つまり、たとえ実際に住んでいるのが一人であっても、その人が勝手に売却したり、賃貸に出したり、リフォームを行ったりすることはできません。
しかし、こうしたルールは案外知られておらず、「自分が管理しているから」「費用を負担しているから」といった理由で独断で行動し、結果として後々大きなトラブルに発展する事例も少なくありません。
他の共有者が反対して売却契約が白紙になる。あるいは勝手に建物を改装した結果、損害賠償を求められたりといった事態も起こり得るものでしょう。不動産は単独で判断できるような軽い財産ではないため、共有状態での扱いには特に慎重に行いましょう。
専門家に相談せずに進めると将来のトラブルにつながる
不動産相続の局面では、「とりあえず話し合えばなんとかなる」「家族だから揉めないだろう」と考えて、専門家の関与なしに手続きを進めようとするケースも珍しくありません。
しかし、相続に関する法律や税金、登記などのルールは非常に複雑であり、誤った判断が将来に大きな火種を残す可能性があります。
一例を挙げると「遺産分割協議書の作成ミスにより登記ができない」「贈与と誤解されて税務上のトラブルに発展する他の相続人の同意を得ていないまま処分したことで訴訟沙汰になることもあります。
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不動産相続において、「兄弟間での協議がまとまらない」「管理が煩雑で放置してしまっている」といったケースでは、通常の仲介では売却が難航しがちです。
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まとめ
不動産の相続は、単に権利を受け継ぐだけでなく、その後の管理・維持・処分に関する協議が避けて通れません。法律上の相続分と実際の貢献度のズレ、共有名義による意思決定の複雑さ、感情的な対立などが、トラブルを招く要因となります。
こうしたリスクを回避するためには、早い段階から家族間で意思疎通を図り、不動産の活用方針や費用負担のルールを共有しておくことが大切です。必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家を交えながら、法的・実務的にスムーズな相続の体制を整えておきましょう。